佐山雅弘のブログ
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2016年3月3日
M16-18
M16 愛しい生活
鈴木聡はボサノバが大好き。1stのラザニアも佳い曲だった。“愛しい生活”。なんてボサノバなタイトルだろうと思った。
1stでの“役をもらうためなら”は、デューク・エリントンの“ソフィストケイテッドレディ”のコードをアレンジしたもの。“愛しい生活”にはもう一つの僕好みの“プレリュードトゥアキス”のコードチェンジから考えてみた。
元曲はコードのテンション(コードの3つの音ではないが、ずれているような、ハマっているような音)をたどってメロディが作られている。大雑把に言って、一つのコードに二種類考えられるテンションノートの、元曲では使ってない方の音使いで作曲。対旋律に“prelude to a kiss”の骨組みを乗せてみる(高橋香織のバイオリンが麗しく弾いてます)と、なんとお洒落な仕上がり。
難点は・・・歌いにくい。
台本が届いた時に、小倉さんの歌うシーンが随分多い。あぁ、彼は歌う人なんだ、SETも音楽ものを随分やっているというぞ、と思って、他の曲も含めて張り切って作った。ふたを開けてみたら豈図らんや!
それでも良い声をお持ちで、全曲素敵に仕上がってます。
“♪それが愛しい生活”と歌う3回とも、メロディを微妙に違えてある。“ハネムーン”と同じように、問いかけ、安心、二人の確認、みたいな変化をつけているわけだ。曲を提示した時、北村さんがいち早く、そこに気づいてくれて、小倉さんと話し合いながら、可愛い振り付けとともに、素敵に仕上げていただいた。
ボサノバの歴史は主に3段階。ジョビンやジルベルトによる創成期(伝統的なサンバをジャズのハーモニーに乗せた)、ナシメントたちに代表されるミノスサウンドの第二期(和声の発展と独自の用法プラス民族性が色濃く出たオリジナリティ)、イバンリンスに代表される第三期(踏襲しながらもグローバルなひろがり。自然にポップスと渡り合う)。
“愛しい生活”は第三期の自由さを持ちながら、第一期的な“素朴なジャズ(エリントン)への憧れ”が溢れている。
稽古ピアノ用に作ったイントロは、いわゆるボサノバのギターパターンにはない、と3吉に教わったのであれこれ変えてみたのだが、結局今の形(最初のアレンジ)に落ち着いた。
ギタープレイ。イントロや歌バックでのリズム打ちも格好良いし間奏やエンディングでのオブリガートがとても奇麗。
M17 浮気
なんと大胆な歌詞だろう。「大丈夫かいな?」と、驚いたものの、読み下せば自然にメロディが出てくる。歌詞に音符が既に書かれているような。4小節3段まですらすらと。
“♪ただでさえ”という次の段も、北村さんをイメージしたらスンナリと出てきた。まさかあそこまでの振り付けがつくとは想像しなかったけれど。あの冒頭の動きを見逃すまいとするあまり、イントロを間違えることしばし。
女子二人が男を責める場面はタンゴ。真飛さんの蹴り上げる足のなんと素敵なこと。いつか見たブエノスアイレスの大劇場での看板ダンサーを彷彿とさせる。
エンディングに迷っていた。決め込まないまま稽古に持っていったら、「許せない!」の台詞でカットアウト。なるほど、そういうアレンジ法もあるのだな。
M18 ライフイズミュージカル/人生は過ぎる
明るい曲を暗く使う。短いシーンながらも、鈴木聡の面目躍如。
香織ちゃんのオブリガートと相俟って、三好のアコギが泣ける。何度目かの本番から、ピアノを抜いて(弾かなくして)みたらますます情景的になった。引き算の美学。ピアノに残った残像的な照明の中で、秘かに演技して楽しんでいる。帽子を使った名倉加代子風。
3吉がある日ガットギターをあてがっていた。ますます泣けた。そしたら、キャストの一人が“ウクレレっぽい可愛い音ですね”。
2016年3月2日
M14,15
M14 ライフイズミュージカル/ウエディング
ここでこのミュージカルの第二メインテーマとなる“ライフイズミュージカル”が出てくる。台本先行なので、この後の色んな変化に対応するべく基本動機を考えた。基本動機というのはベートーベン“運命”の“ジャジャジャジャーン”というあれ。短いワンフレーズで全体を支配する音型のことです。
種明かし。“げきじょうーへー”のメロディの“じょ・う・ー・へ”の音をダウンビート(始まりの小節の1拍目)の二拍前にアウフタクト(先立つ音符)にすると“Life is musical”の“ライフ・イズ・ミュー・ジ”までのメロディになります。
このように似て非なる別曲を並べることで全体の親和感を図っているわけ。直感と計算のはざま、融合。経験値ともいえるし、“霊感”と気取って、口説きに使ってもよい。
そうして先に出来上がったサビに向かって、Aメロを作っていく。これは語りの要素が多いので、言葉のイントネーションとリズムに合わせて図形を書く。その上から五線を当てはめると(←比喩ですよ。念のため)自動的に曲になっていく。整理整頓、ムードにあったコードを割り振ったら、結婚式お約束のイントロをつける。
と、レシピを思い返してみるのだが、実際の所、この曲に関しては作った過程がぼやけている。僕はコンサートでも曲順に編曲したり作曲する。今回の作業は突貫だったので、14曲目ともなると、朦朧としながら書いていたのでしょう。そのせいで、他人事のように(誰か他人が書いたかのように)思えるので、素直に「明るく楽しく、佳い曲だなぁ」と楽しんでいる。
石原さんの美術も可愛いし、キャストの動きもお茶目だし、トランクは走り回るし、ね。
M15 エアポートの悲劇
バース付きの歌詞が来た。シャンソンでは“クープレ”、ジャズでは“バース”、オペラでは“レスタティーボ”。本歌(コーラスともいう)に入る前の語り歌いの部分。有名なのは“スターダスト”。本歌の“sometime I wonder,,,”に入る前に“and other purple dust of twilight time”(←うろおぼえ)と歌う部分ですね。
ハネムーンという歌詞が4回。特別の指示はなかったのだが、わざわざ4回書いてあるのだから、と考え込んだ。
一体、鈴木台本にはこういうことも多い。「・・・」とかね。”ぼっちゃま”の時に演出の河原さんがキャストの誰かに「このテンテンの意味する所を演技しよう。なぜテンテンが4つじゃなくて3つなのか」みたいなことを言っているのを傍で聞いていて感動しつつも「役者と言うのも面倒なもんだなぁ」
ハネムーンに戻る。
4回を「期待→喜び→不安→落胆」と解釈してメロディの上げ下げと和音を作った。そのあとのひとくだりは、おしゃべりのイントネイションにメロディを充てて、ジャズっぽい洒落たコード。歌手と伴奏の絶妙のやり取りが見せ場なのだが、北村さんの抜群の振りにお客さんもバンドメンバーも釘付け。仙波師匠のおもしろ音が増幅。おかげで音楽はかすみがち?
それで良いのだ。
「すっごーく面白い芝居。ようく聴くと、支えている音楽が高度で凝っていて素晴らしい。」劇音楽の理想型。通は裏地に凝る。
歌い終わりで、ビギンのリズムが始まっていよいよ本歌が始まる。
「おれの荷物は」と一つ前の曲の「ぞくぞくと」。それぞれの歌い出しは、キーと音型を似せてある。
サビの“しらなーい”は冒頭の “ハネムーン”のメロディ。その受け答えの“うそだー”“オーマイゴッド”は「非和声音の二重半音経過音」という、用語も実際もややこしい音なのだが、男優二人がよく歌ってくれてます。
エンディングは鈴木さんの指示で、芝居によるカットアウト。終盤に植木等風の振りが入ったので、何回目かの公演がらミュージシャンそれぞれ勝手に、ドドンパのリズムやスーダラ節のフレーズを入れたりして楽しんでます。
特にギターの3吉は、小倉さん所有の植木さんから譲り受けたギターをステージで使わせてもらっているので思い入れもたっぷり。次のボサノバでは、そのオールド(レア・ビンテージ)ギターで小倉さんソロ始まりをバッキング。二人で植木さんへのオマージュになっている。こういう気分が、またまた裏地となって作品をふくよかにしていくのだろうと思います。
2016年3月1日
M12,13
M12 恋と音楽アンダースコア
恋や結婚についてのモノローグのバックでさりげなく流れる“恋と音楽のテーマ”。
呟くようにワンフレーズ歌ってから語り出す。最後に歌ってシーンを締める。タイミングがその場所に行くように計算しているようでもあり、流れに任せる方が尺も自然にあってくるような。ピタリとハマらなくてもそれはそれで面白いし。まぁ、JAZZですねぇ。生演奏ならではの、やりがいのあるシーン。
M13 I’ve Lost My Way
ルナが初めて歌う。出番もそうだが、芝居がここまで進んでからの登場・歌唱というのは自分自身の持っていき方が難しいだろうによくやっている。
役どころとしては、誘惑するような、そういうことではないような、曖昧さを残したまま後段の種明かしに繋がるのだが、音楽としてはここは“誘惑”。
鈴木さんは“アレサ・フランクリンのような大人の色っぽさと、ソウルミュージックのビート感、ただし攻撃的ではなくゆったりしたほうの”。
オペラからブラックソウルまで。彼の頭の中にある図書館にはどれだけの音楽項目が詰まっているのだろう。それも実感を伴って。そして引き出しはいつでもスムーズに開け閉めされる。常に油を注していつでもベストな走りが出来るようにチューンナップされている車のように。
歌唱指導の北浪良佳さんは、ホイットニーにシビれて歌手になったような人だから、この曲の歌唱指導でフェイク伝授している時など、僕とのセッションになってしまって、止めどなくフレーズが溢れ出る。杉さんも好きだからとても楽しいのだが、稽古が進まない。
杉ありさ。なんとAretha(アリーサ)Franklinと同名。なんていう小さな偶然も嬉しくなってしまうくらい、僕はソウル、ファンクが好きなのだ。
フィラデルフィア・ソウル、というストリングスを利かせたスイートブラックコンテンポラリィなジャンルの曲風に仕上げた。仕上げたというよりも、歌のメロディだけを書いて渡せば、イィ感じのソウルにしてくれるのだな、このバンドは。
吾郎ちゃんの歌い出し。低いほうのBbで彼にとっては相当低い、少なくともポップスでは使わない音なのだが、実に魅力的な声である。
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グレイト!(32)